カイロ矯正

最近ではかなりポピュラーになったカイロプラクティック（以下カイロ）ですが、前述したように実際には患者さんにとっての選択もむつかしく料金体系についても分かりにくいのが現実ではないでしょうか。
リンクの中にカイロについて詳細な解説を挙げてありますから詳しくはそれを御覧下さい。
ここではアウトラインだけ述べます。
古代ギリシャの医聖ヒポクラテスにより骨格の異常と病気の関連やその治療法が熱心に研究された記録が残っており、ここにカイロの科学化への萌芽がみられますがその後は、わずかにガレン（129〜199B.C.）が指の痺れを頚椎のアジャスト（矯正）で治したなどの記録があるくらいで大した発展もなくヨーロッパの民間医療としてひっそりと伝承されてきた程度のものでした。
この技術の一部がヨーロッパからの移民とともに、新天地・アメリカに渡ったのです。

D.D.パーマー

そんな建国後歴史の浅いアメリカで磁気治療や手技療法（ハンドセラピー）を行なっていたダニエル・デビット・パーマーが、脊柱矯正の治療法に興味を抱いたきっかけは次のような経験だったといわれています。

『彼の黒人の召使ハーベイ・リラードが仕事で重荷を担ごうとした時、突然背部に異常な音を感じた。
そしてそれ以降聴力が低下して遂に難聴となっていた。パーマーが、彼の背中を調べていると、ある部位の変な突起に気づいた。

それでパーマーはこれが難聴と何らかの関連があるのではないかと考え、その椎骨を正常位に戻すように工夫して、アジャストし続けたところ、予想通り、否，予想以上の成果を得た。
つまり数回の治療でこの異常隆起は正常に戻り、その聴力も回復したのです。』

この事実はパーマーの心をひどく動かし、その後彼は生命と健康を哲学的に思索したり、脊椎の異常と病気の関係を科学的に研究する事に没頭したといわれてます。
このカイロの原理は、アスクレピオスとその弟子たちによって420年B.C.に知られ、その技術は実際に行なわれており、ヒポクラテス以降カイロを再発見する可能性は幾度となくあったのですが、2000年以上もの長い年月、誰もそれをなし得なかったのです。

2000年の眠りから覚めた手技療法は正に新世界のアメリカでカイロプラクティックと名付けられ花ひらいたのです。

ダニエル・デビット・パーマーの出現なくして現在のカイロの存在は考えられません。
しかし彼もまた先覚者としての辛酸をなめたのです。
治療に対する偏見からさまざまな迫害を受け、医師法違反の罪で百日あまりの刑で投獄されたのです。それは当初罰金刑だったのですが、「私は患者に請われてカイロをしたのであり、ペナルティを払ういわれはない。」とその刑を認めず、獄入を自ら選んだのです。

しかし、カイロの恩恵に浴していた地元ダベンポートの住民たちから解放の請願運動が沸き起こり、20日足らずで獄から解放されたのです。
そしてパーマーは、脊椎の変位を矯正することによって劇的な効果を挙げた事実から、それはなぜか、病気はなぜ起こるのだろうか、という疑問に対し、その科学的解明に自己の人生を懸け、カイロの中に科学と哲学を見出してそして芸術にまで昇華させようとしました。

1895年9月18日にカイロプラクティックという名を初めて提唱し1897年にはパーマーカイロプラクティック大学を創設します。

アメリカではカイロ生誕の日と記念し、毎年その日をカイロプラクティックデーと呼び、彼の功績を称え、カイロの発展を願う日になったのです。
1995年9月18日はカイロ生誕100年祭として全米各地で盛大な祝典が開催されました。

私もパーマー大学の祝典にＯＢで私のガンステッドの師でもある小林忠正先生とともに参加し、その翌日世界一の規模を誇るガンステッドクリニック（ウィスコンシン州）を訪れその広大な芝生の中庭を偉大なカイロの先覚者たちが今にも私の目の前に現れるのではないかとの思いでじっと眺めた事を、本稿を書きながら今、懐かしく想い出しています。
そのパーマーも1910年にカイロ界にレントゲンを取り入れ科学性を強く打ち出した息子のバートラント・ジョセフ・パーマーとの確執を生じ、想い出の地アイオワ州ダベンポートの町を離れ独り放浪の旅人となったのです。悲しくもあり、ロマンティクでもあるダニエル・デビット・パーマーの晩年です。

一人の天才の姿を通じてカイロの歴史とアウトラインに簡単に触れてみました。

カイロのイメージが変わりましたか？
カイロの治療理論を分かり易く短く述べてみます。直立二本脚歩行をする人間は四脚動物と異なり非常に不安定な力学構造となっている為，腰や首そして背中といった背骨を中心にゆがみを（サブラクセイション）を生じやすい現実がまずあります。

このゆがみは、背骨のすきま（椎間孔）を通る組織（神経・血管・リンパ等）を圧迫する現実を生み出します。
そしてこの椎間孔の変化は、そこを通る脊髄神経やこれと連絡する自律神経の機能を低下させます。特に神経の伝達力が低下します。

その結果、その椎間孔の部分で圧迫された神経の支配下または影響下にある組織や器官の一部または全部が機能低下をおこしたり、あるいは徐々に器質的疾患状態をおこしたりしやすくなります。

具体例としてムチ打症（頚椎間孔の狭窄）による手のしびれ、腰椎間板ヘルニアによる下肢への坐骨神経痛やしびれ等があります。

その原因のゆがみ（サブラクセイション）をカイロテクニックで矯正（アジャストメント）するとその椎間孔を通る組織の圧迫（障害）が取り除かれ、それら組織の機能が正常に回復し、自然治癒力が引き出されて、人体の違和すなわち、半健康状態や疾病の状態が機能的にも、器質的にも更生されるのです。
これが椎間孔に於ける神経圧迫理論ですがこの他のカイロ理論の仮説として次のような諸説もあります。
固有受容器損傷説・体性交感神経反射説・内臓体性反射説・体性反射説。
いずれの理論でこの脊柱・骨盤のゆがみとアジャストを説明しても私はあまり意味がないのではないかと秘かに思っております。

骨格のゆがみがもたらすものは最終的にリンパ球の減少からくる体調不全と疼痛です。
うまくアジャストが出来れば、疼痛は劇的に消失し血流は回復し、神経系の賦活がおこり症状はそのまま治癒に向かうことも少なくありません。

しかし、サブラクセイションが再発するケースも少なくありません。
何故うまく行ったアジャストに対し再発という後退現象が生ずるのでしょう。あらゆる意味でのストレスが骨格のゆがみを呼び起こすことがもう理解できる筈です。

カイロ理論と前述した自律神経免疫療法とをすり合わせてゆけば、結果的にはリンパ球の働きが体調の支配者であるというこの福田・安保理論がカイロの理論構成にも欠かすことのできないものとして帰納することがお分かりいただけるものと思います。

この考えに基づいてこの二つの手技を併せて行なうことにより、より早く、より確実に免疫系や神経系の賦活を得ることができ、症状軽減し治癒に至ることができると思っています。

以下、各症状ごとのカイロ基本手技の代表的な治療法をのせておきます。

頚椎のアジャスト	胸椎のアジャスト
胸椎のアジャスト	腰椎のアジャスト
腰椎分離症のアジャスト	腰椎すべり症のアジャスト
骨盤のアジャスト	ハムストリングスのストレッチ
ニージョイントアジャスト	後頭骨触診

アジャスト（矯正）はできるだけソフトに安全且つ痛くなく、しかし確実に正常な関節面の位置へ整復させるためには、力を深部にまで到達するスラストが求められます。
二律背反するのです。そのためには患者さんの体位、私のスタンスのとり方、瞬間的な力の入れ方、カイロテーブルの正しい選択等充分に考慮して行なう必要があります。

私は米国製のリエンダーカイロテーブルを使っています。
本項でどこまでお伝えできたのか不安ですが、カイロ手技の素晴らしさを是非理解して頂き、健康ライフを共に築きたいものです。

D.D.パーマーの息子であるB.J.パーマーの大学での講義録よりの一節（質問した学生に答えた場面）を最後に引用したいと思います。

THE TRUTHAnd yet you ask, "Can Chiropractic cure appendicitis or the flu?" Have you more faith in a knife or a spoonful of medicine than in the power that animates the living world?

B.J. Palmer

−　真理よりの一節　−
それでも、あなたはまだ尋ねるのか「カイロプラクティックで、果たして虫垂炎やインフルエンザを治すことができるのか？」と。　
人間本来が持つ生命力よりも、一本のメスあるいは、スプーン一杯の内服薬の方が信頼に値すると、あなたはまだ思っているのか。